「共同出版初級講座」改め

書店流通型自費出版に潜むワナ



その費用負担は適切か?  計算式でチェックしてみよう!


 
今、不況をよそに、自費出版・共同出版がブームです。
 自費出版や共同出版を否定するつもりはまったくありません。それらは、表現活動を行なってゆくうえで基本的かつ重要な方法のひとつだと言えるからです。
 しかし、自費出版ブームに便乗し、出版事情に疎いアマチュア創作家の夢を食う非道な出版ビジネスが横行しているのをご存じですか?

※「共同出版」の定義は出版社によって若干異なるようです。「共同出版」以外にも「協力出版」「Bタイプ出版」「共創出版」「支援出版」「準企画出版」「共同企画出版」「パブリック出版」「プライベート出版」「出版実現プログラム」「委託金出版」「個人出版」「自主出版」「流通出版」「全国出版」「タイアップ出版」「条件つき出版」など、さまざまな名称があるようですが、ここでは、従来の商業出版で著者が一部買い取るものを含め、「著者が多少なりとも出版社に対し費用を負担する出版形態」として「共同出版」という名称を使用します。なお、このページの「共同出版」という表現は、上記「協力出版」などを含め特定の出版社の出版システムを指すものではありません。
【注意】2007年になってアマチュア創作家の夢を食う出版商法がメディアで徐々にクローズアップされるにつれ、これらの商法を行っていた出版社は「共同出版」等の名称を避け「自費出版」と称するようになってきました。また、セールストーク・セールスシステムともネットでの警告情報を学習し巧妙化してきています。このページでは、これまで「共同出版」と称していたシステムを分類上、新しく「書店流通型自費出版」と呼ぶことにします。もちろん、書店流通する「自費出版」にも健全なものはあります。このページにおける「自費出版」と「書店流通型自費出版」の定義区分は、
自費出版=自費で出版するということが主な目的であり、書店流通は付帯的。(本の所有権は100%著者)
書店流通型自費出版=書店に自費出版物(共同出版物)を流通させるということが主な目的。
とします。
また、上記のような環境の変化があるために、このページでは「共同出版」と「書店流通型自費出版」という表記が混在していることをご承知ください。

 出版社から出版計画を提示されたことで舞い上がってしまい、さまざまな問題点を見落としたまま費用を負担しているだけでなく、出版までの過程でエネルギーを使い果たし、最後まで基本的な問題点にすら気づいていない人の多さに驚かされます。
 そこで、
あなたの出版計画が適切であるかどうかをチェックするためのヒントを書き上げてみました。(これは小社の出版制作・販売環境から考えたひとつの意見です。その点については、あらかじめ御理解のほどお願い申し上げます。また、3次利用防止のため、以下の内容に関しては一切の転載や引用を固くお断りします。ただし、このページへの建設的なリンクは歓迎します。)
 
「自費出版レベルにとどめるには惜しい作品です」
「全国流通に乗せる『協力出版』枠へ推奨」
「自費出版とは異なる全国展開可能な書籍刊行システムを推奨」
「○○様が有名でないので企画出版は困難です。しかし、このまま埋もれさせるのはもったいない作品です」
「○○様の作品は惜しくも選から漏れてしまいましたが、作品はすばらしく、私から推薦させていただいた結果、共同出版のご提案ができることになりました」
「○○様は素晴らしい原石を持っている。○○様の作品は本として世の中に出すべきであると私は思います。なによりも私が○○様の作品に惚れ込みました」
「第二弾(続編)は、当社の負担で出版いたします」
「○○様の作品は、私の心に残る作品となっていました。そこで提案なのですが○○様の作品の出版プロデュースをさせていただき、今まで好評いただけた作品同様『共同出版』で世に問うてみたいと考えています。私個人の思い入れは別にしても、出版の良さは数多くあります。著者の分身また子供である作品が、多くの読者・人との出会いの場を創造し、公的な財産として永久に定着することは、表現者なら誰でも夢見ることではないでしょうか。時間と距離を越えて多くの人に読み継がれていく本を出版していきませんか」

 あれ? どこかで読んだことのあるような評価文だな、と思ったら以下必読です。
 これらは「賞ビジネス」「コンテスト商法」「出版賞商法」、あるいは「錯覚商法」と呼ばれているもので、あなたの原稿は選ばれし原稿なんてものではなく、原稿応募者のほとんど全員に同じような口説き文句(セールストーク)で、名ばかり「共同」という非常にお粗末な出版計画をセールスされている危険性があります。(原稿募集の広告や出版コンテストと同様、出版相談会などにも注意を払う必要があります)。



考察1:もしかすると、あなたに提示された見積額は、出版されたあなたの書籍を、あなた自身が書店で全冊定価購入した時よりも高い金額にはなっていませんか? それって不思議ではありませんか?
 自費出版の場合は、あなたの原稿をそのまま印刷・製本するものから、読者を意識して高度で丁寧な編集を行うものまでサービス内容に著しい幅があるので、その費用が高いとか安いという判断は簡単にはできません。
 しかし、共同出版の場合は、そうではありません。
 なぜなら、共同出版の場合は、「書店に流通させるための書店価格が設定されている」からです。
書店価格が設定されていて、初版部数がある以上、共同出版費用には「適正価格」(適正負担額)というものが存在するはずです。(編集や装丁も書店流通を前提としているので、それに堪え得る編集作業や装丁作業は原価の内に含まれて当然のはずです。)
 つまり、共同出版には、
@「著者に有利な共同出版」
A「あまり出版社がリスクを負っていない共同出版」
B「共同出版とはいうものの実質自費出版。ただし、書店販売や直販の成果によっては十二分に出版費用の還元を受けることができるもの」
C「単なる自費出版にコードがついているもの」
そして、
もっとも注意していただきたい
D「自費出版未満」。つまり、共同出版より自費出版といわれている形態で出版している方が結果的には良いもの

と、質的にはさまざまなのです。

 それでは、
共同出版における適正負担額を算出してみましょう!

著者が出版費を負担する金額の上限の目安(書店に流通させるという場合):

共同出版する本の定価 (書店価格)× 発行部数 × 0.4(最悪でも0.8)≧ あなたが共同出版する会社に払う金額(の上限) ※出来上がった本の所有権が著者に100%ある「自費出版」に、書籍コードを割り当てもらい、採算度外視で書店価格を設定した場合、この方程式は有効ではありません。

 つまり、あなたが共同出版しようとしている作品が、書店価格1000円で初版2000部印刷とした場合、80万円〜100万円が、共同出版費用の上限と言えましょう。ただ、これだけのお金(上記の公式で係数値が0.4以上)を払った場合、出版社側は「共同出版」と呼んでいても、実質は「自費出版」です。「リスクを著者と分け合う」が謳い文句の共同出版というのなら係数値は0.4未満、「書店流通をサポートする」という共同出版なら0.8以下、「出版費用を著者と『折半』」という共同出版なら0.2以下であるべきだと思います。
係数値の算出法:あなたが共同出版する会社に支払う金額÷発行部数÷本の定価(書店価格)=ここで言う係数値
※あまりにお粗末な本であったり、あるいは、出版現状の常識から外れた大量の初版部数を印刷すれば、故意に係数値を下げることも可能なので、注意が必要です。

(「係数値」算出時に、ページ数や装丁は、まったく影響しません。編集費や広告費も一切関係ありません。)

 係数値は0に近いほど出版を目指す著者にとって良い出版条件で、0.8が常識としての限界値。この係数値が0.8を超えて大きくなればなるほど、出版社は出版事情に疎い著作者の純粋な気持ちを踏みにじっているような気がします。
 
共同出版を謳い文句にしている出版社では、この係数値が1.5とか2.5という数値になることもあります。係数値が0.7を超えると、出版社は印刷製本して著者から集金するだけで、1冊も販売しなくても十分な利益を得ていると考えられます。なぜなら、書店ルートで流通する書籍はの定価の70%前後で出版社から出荷されるからです。通常の出版(出版社が出版費用を全額負担し書店に流通させている作品)の場合、どんなに有名な出版社の本でも、書店価格1000円の本で初版2000冊の場合、すべて書店ルートに出荷しても140万円前後で出版社は採算がとれるのです(採算をとらなければならないのです)。また、(通常の出版であっても)著者が書店価格1000円の自著2000冊をすべて出版社から著者購入した場合140万円〜160万円、書店ですべて定価で購入しても200万円にしかならないからです。短編や写真などをオムニバス形式で数万円で掲載するという共同出版もあるようですが、収録総作品数から考えると、やはり書店で販売する以前に十分な利益を得ていると思われるものもあります。オムニバス形式の作品の場合:1人(1作品あるいは1ページ)あたりの掲載料×掲載アーティスト数(掲載作品数あるいは総ページ数)÷初版部数=本1冊あたりの単純原価

 もし、あなたに提示された見積書に書店価格(発売予定価格)が明記されていない場合は、次の計算を行ってください。
  あなたが出版社に支払う金額÷初版部数=本1冊あたりの単純原価

 
あなたの本の原価はいくらになりましたか?
 この時点で、とんでもない原価になっているのではないでしょうか? 書店に並ぶのであれば、原価に加え、取次(卸)の利益や、書店の利益も加味されなければならないので、書店価格は算出された原価よりさらに高額なものになるのです。また、ここで算出された原価は、あくまで、あなたが負担する出版費用のみで算出したものです。もし、本当に出版社が出版費用を負担しているとすれば、原価はもっと高額なものになります。仮に出版費用を著者と出版社が「折半」しているのなら、原価は上の式で算出された額の倍になるわけです。

 
 共同出版を勧める出版社の中には「大手の出版社でも、単行本では儲けていません。雑誌などの広告収入で儲けているのです」と説明するところもあるようです。たしかに、新刊ラッシュの今日、書籍は初期投資費用の回収すら容易なものではありません。しかし、広告収入のない(雑誌を発行していない)出版社も多々存在していることを考えていただくと、その説明の真偽のほどは明白です。
 また、「作品の質だけで収益を上げることは今日の出版界ではできない」といった説明をする会社もあるようですが、中小の出版社で著者に出版費用を負担させることなく秀作を世に送り続けている出版社はいくらでもあります。

 ここで、あなたの出版計画をいたずらに否定しようとしているのではありません。また、単に印刷製本原価を持ち出して問題提起しているわけでもありません。私どもが心配していることは、
 
著者自身が自分の本をすべて書店価格購入した場合より高い金額を出版社に支払ったにもかかわらず、あなたの目の届かないところでは本当に書店に並んでいるかどうかもわからない、何冊売れたかもわからない、残った自分の著作物も手に入らない、という最悪の事態に陥るのではないかということです。

 著者とリスクを分け合うということを謳い文句にしている「共同出版」の場合、係数値が0.7を超えた場合は、あなたの描いている出版像と出版社の考えにズレがないか十分に確認する必要があります。また、出版費用の何%を出版社が負担しているのか(本当に「折半」なのか)口頭でなく文面で確認してください。他の出版社などに見積ってもらうことも大切なことだと思います。いろいろな理由をつけて契約を急がせるのは、今を逃がすと出版するチャンスがなくなると焦らせ、他社との見積りを比較させないための手法ではないでしょうか? 通常の出版の場合でも、よほどの速報性が問われる原稿でない限り、検討するくらいの時間は十分に著者に与えてくれます。
 それ以前に、
200万円もの金額を著者が負担するというのであれば、喜んで書籍化に力を貸してくれる初版2000〜3000部クラスの中小出版社なんていくらでもあるでしょう。もっとも、その作品内容が出版社の考える最低ハードル(「書店に流通させるだけの価値がある原稿」という基準)をクリアしていればの話ですが……。



考察2:書店で、自著をすべて定価購入した時よりも高額な金額を払っているにもかかわらず、本の所有権が出版社にあるのは不思議ではありませんか? (本そのものの所有権と、著作権・出版権は別です)
 非常に大切なことなのでくりかえし書きますが、共同出版の場合は書店に流通させることを前提としての書店価格が設定されています。それらから考えると、係数値が0.7を超えた場合、初版印刷分すべての本を受け取って当然の金額をすでに出版社に納めています。にもかかわらず出来上がった書籍の所有権は出版社側にあり、著者の手元には発行部数の10%程度が届けらるだけという共同出版もあるようです。共同出版においては、出来上がった書籍(印刷物)の所有権が誰のものなのか契約前に確認しておくことが最も重要なポイントになります。
 自費出版では、出来上がった本の所有権は著者のものですから、売れ残った場合、プレゼントとか寄贈という方法も使えます。しかし、自費系共同出版の場合、出来上がった本の所有権は出版社側にある場合がほとんどです。

「増刷」「印税」を夢見る著者は、常識的には自分の所有物になっているだけの金額をすでに出版社に納めているにもかかわらず、自著を出版社や書店から新たに購入するという「二重払い」を必死に行っている人も少なくないようです。また、自費系共同出版社は、自著を二重購入するという著者心理を巧みに利用していると思える部分さえあります。
 もし、本当に「著者とリスクを分け合う『共同』出版」なら、売れた部数によって著者が負担した共同出版費用を返還すべきではないでしょうか? 初版が完売できたのなら、「共同」出版の初期目標はクリアされたはずです。印税を支払う以前に、著者が負担した共同出版費用を全額返還するのが当然だと思います。初版を完売した場合、共同出版費用(出版委託金)が全額返還されるのか、もし、初版の80%しか売れなかった場合、共同出版費用の何%が返還されるのか、また、初版が完売する可能性は何%くらいなのか、書面で十二分に確認しておく必要があると思います。(出版委託金や初版供託金を設定している出版社では、アマチュア創作家にとって、跳べそうで跳べない絶妙なハードルを設定している場合があるので、注意が必要です)。自費出版では費用回収に執着しない方が賢明(簡単に売れるものではない)というのは事実ですが、その気持ち(現実)を逆に出版社に利用されないように気をつけなければなりません。

 共同出版で「売れ残った本を引き取らなくてよかった」と言う人をたまに見受けますが、自著をすべて書店で購入した時よりも高い代金を払っている(=1冊も売らなくても出版社は利益が出ている)のですから、売れ残った本を引き取るかどうかというレベルの問題でないことは明白。特に知っておくべきことは、
本の所有権が出版社にあるということは、本を処分する権限も出版社にあるということです。「初版1000部発売一定期間後、出版社から残数350部と報告があった」という著者は、残数が350部なので引き算して「650部売れた」と考えて満足していたようですが、独自に追跡調査してみたところ、全国の書店での総売上部数は10部前後ではないだろうかという悲惨なデータしか得られませんでした。このように書籍本体の所有権が出版社にある自費出版の場合、販売開始6か月くらいのデータを基に在庫を絞り込む(=必要最小在庫量まで処分する)ことが十分に考えられます。



考察3:原価を無視して書店価格を設定すると、どういう現象が起こるのでしょうか?
 もし、本の所有権が著者に100%ある自費出版であれば、原価1500円の本を1000冊、150万円でつくり、赤字覚悟で1冊1000円で販売していくことも可能です。ただ、この場合、直販で完売しても100万円しか回収できず、1000冊販売して50万円の損失、あるいは、表現活動のために50万円の出費をしたと考えなければなりません。また、よほどの追加注文が殺到しないかぎり、初版完売しても増刷は困難です。なぜなら、増刷することによってさらなる赤字が生じるからです。
 上記<考察1>で、書籍の原価計算を行いましたが、共同出版を提案されている方の多くは、あまりに高額な原価になっているのではないでしょうか? 
 共同出版された書籍の初版部数は500〜1000部が一般的のようです。これは単なる私どもの勉強不足だったよいのですが、それらの部数から考えると書店価格が不自然に安いのです。つまり、原価から書店価格を算定しているのでなく、本の見た目から書店価格(初版3000〜5000部相当。あるいは増刷1000部
相当)を設定しているように思えるのです。※初版1000部と増刷1000部の費用は、まったく異なります。
 初版部数に対して書店価格が不自然に安い(≒価格がフィクションである)ために係数値が1.5とか2.5になるとも考えられます。 (共同出版された本でヒットした著者が同じ自費系共同出版社から再度出版した時には、1作目よりも書店価格が実質値上がりしています。つまり、書店実売の可能性ある作品に対しては、現実的な書店価格を設定するものと考えられます)。
 共同出版商法においての最も深刻な問題点は「価格がフィクションであること」だと私どもは考えます。原価を無視して、本を見た目で書店価格設定してしまうと、初版売切で採算度外視といった限定本ならとにもかくにも、増刷以降は費用出版社負担という場合、スマッシュヒットすれば別ですが、1000冊未満の中途半端な増刷が生じると出版社は初版で得た利益を減少させてしまうはずです(中途半端な増刷はしない方が利益を保持できる状態)。これは何を意味するかというと、出版社側は「初版すら完売できない」「書店では売れない」ことを見込んでいると思われます。(書籍価格を上げると係数値を下げることができますが、その書籍価格について著者が書店販売に堪え得ると納得できれば「価格がフィクション」という共同出版の問題のひとつはクリアされたものと考えられます。)

 書店に流通する書籍の価格は、印刷製本原価などから算出するもので、著者と相談して決定するようなものではありません。また、自費系共同出版社の書店価格がフィクションでなく初版500部とか1000部という本づくりが商業出版として本当に可能であれば、良書づくりに取り組んでいる中小の出版社はとっくに実践しているはずです。



考察4:
あなたは、その出版社の本を書店で見かけたことがありますか? 読んだことがありますか?

 通常、文庫本や新書本は○○社文庫、××社新書というように出版社別で陳列されていますが、一般の本は「児童」「小説」「エッセイ」「紀行」「写真」などのジャンル、あるいは作家名別で陳列されるのが一般的です。しかし、共同出版の本は、「■■社」という独自のコーナーが設けられ、ジャンル分けされることなく陳列しています。たとえ、絵本のコーナーが充実している書店であっても、例外的なヒット作を除いては絵本のコーナーに置かれることはありません。すべての共同出版系の本がそうだとは限りませんが、これは「棚貸し」「棚買い」という書店にお金を払って本を陳列してもらっている典型的なパターンなのです。そんな陳列方法で、あふれる書籍の中から不特定の読者に本の存在をアピールすることができると思いますか? たまにジャンル別のコーナーで自費系共同出版社の本を見かけることがありますが、奥付に目を通してみると、その書店の近くに住んでいる人の作品です。

 もし、あなたがCDショップに行って何となく買ったCDが、シロウトが家やカラオケで録音したものを、レコード会社にお金を払ってCD化しているだけの作品だったとしたら、どんな気持ちになりますか? そんなレーベル(会社)のCDは二度と買わないでしょう? また、もしあなたがCDショップの店員だったら、そんなレーベルのCDは仕入れたくないでしょう?

 出版不況と言われる今日、魅力的な作品を調べてゆくと、その中には共同出版型の作品も少なくないのです。ただ、それらの作品を送り出している出版社は、共同出版を事業の一部として前面には出していません。共同出版を前面に押し出すと、出版社のブランドイメージの低下にもつながるからです。出版社名は、やはり、書店の仕入担当者、図書館関係者、そのほか業界人からすると非常に重要なものです。せっかく良い作品であっても「■■出版社の本だから共同出版作品なんだ(=著者からお金とってつくっている本なんだ。出版社に金払ってつくってもらっている程度の作品なんだ)」と先入観をもたれてしまいます。新刊書の場合は、書店の人が一冊一冊本の内容を熟読して仕入れるわけではありません。ですから、出版社名(発行元)というのは非常に重要なブランドなのです。

 あなたが出版社の傾向について詳しくないのなら、あなたが本を出そうと考えている出版社がどのような方向性・イメージの会社なのか、書店の人に教えてもらうことも大切かもしれません。
 
 書店で見たこともない、読んだこともない出版社に原稿を持ち込むということ自体、首を傾げたくなる行為です。

 私の書いた本(原稿)は売れる、とか、世の中を変えるだけのすごい作品だ、と自負されているのなら、どうして読んだこともないような出版社からの「共同出版」なのでしょうか? 誰もが知っている大手の総合出版社や、そのジャンルを得意とする中小の有力出版社で審査してもらえばよいのではないでしょうか? 作品としての価値があれば、担当者のきちんとした読後感想をもえらえますし、もし、その出版社からの出版がダメでも、ほかの出版社を教えてくれる場合もあります。また、単行本の発売にはつながらなくても、雑誌でのスポット的な執筆担当の機会に結びつく可能性もあります。



考察5:あなたの見積書に、ほかの人の共同出版作品が見本として添付されていませんでしたか? あなたの本もそのような運命をたどるのでは、と考えたことはありませんか?
 出版社が「自社の商品」である「出版物」を気安くプレゼントしたりすることは、あまりありません。特に最近は新刊書の中古書店への流出周期が短く、中古本が新刊本の販売に悪影響を与えているのでなおさらです。
 共同出版では、あなたも実質的な出資者である以上、取次や書店への流通状況や販売結果を出資者として独自にきちんと把握、監査する義務があると思います。特に係数値が0.7を超えた場合は、あなたから共同出版費用を集金した時点で出版社は本を1冊も売り上げなくても十分な利益を上げていると考えられるので、あなたの著作物が、本当に書店で売り上げられたのかどうか、ほかの人たちの共同出版の見積書などにサンプル本として無料添付(散布)されて、その本の運命を終了させていないか、ということにも十分に目を光らさなければなりません。



考察6:あなたの本はいったいどれくらい売れるのでしょうか?
 書店で不特定の読者に売れる本は限りなくゼロに近いでしょう。
 
小社から、作家Aさんの作品を出版しています。Aさんは約20作品で計90万部近いセールスがある売れっ子作家です。しかし、そんな売れっ子作家の本でも、書店に並べておくだけでは、なかなか売れるものではありません。小社の書籍を好意的に取り扱ってくださっている書店さんで、Aさんの作品5冊を半年並べてもらって1冊も売れないということもしばしばです。本が売れるには、タイムリー(=本が書店に並んでいる期間中)にマスコミで評価・紹介される、推薦図書や選定図書の認定を受ける、書店員さんに著者・著書のファンがいるなど営業以外にさまざまな要素がなければ、たった1000冊売るのも大変なことなのです。現在、日本で1日に発行される新刊は200点。新刊書の書店での寿命は2週間と言われています。半年以内に大なり小なり何らかのブレイクする契機がなかった本は引導を渡されたも同じ。「いつかは売れる」なんてことは、まずありえません

 全国には約17000店の書店があります。「1店で1冊売れると17000冊は売れる」と一般の人は考えたりするようですが、そんなに甘いものではありません。「3店で1冊売れると5000冊売れる」というものでもないのです。
 第一、売れる売れない以前に、書店に本を置いてもらうということは非常に難しいことなのです。また、流通側(取次)も初版印刷部数、すべてを引き受けてくれるわけではないのです。
 書籍の返品率は約40%。これは10万部、100万部と売れるベストセラー・ロングセラーを含んでの平均値ですから、返品率が90%を超える書籍もざらにあるのです。「取次」(書籍卸会社)は、返品(=二度手間)を少なくしたいので流通させる本を厳選させる傾向にありますし、返品率が上がると出版社も取次との取引条件で不利になる場合もあります。つまり、アマチュア作品の書店流通を謳い文句にしている出版社から出版したあなたの本(=著者が金を払ってつくっていることが明らかな作品)は、新刊配本の段階で、すでに大きなハンディキャップを背負っていると考えた方がよいでしょう。

 共同出版(書店流通型自費出版)を行っている出版社では「あなたの作品が書店に流通する」というような表現を行っています。「800書店に営業」というのは「800書店に本が必ず置かれる」という意味ではなく「800書店に営業努力は行いますが、本を置くかどうかは書店の裁量によります」という意味の場合もあります。「書店に流通する」というのも、必ずしも「新刊配本される」ということを意味しない場合があるので要注意です。つまり、「客注のみに対応する」(書店に注文が入れば対応できるが新刊配本はしない)という場合もあるのです。また、「新刊配本」といっても、全国に約17000ある書店に取次が計算して配本することを意味するのではなく、出版社が直接契約している書店にのみ配本するという場合もあります。「書店陳列」を売りにしている自費系共同出版社もあるようですが、「売れるまで何年でも繰り返し出荷して陳列」してくれるのか「半年の陳列」なのか「1か月1回の陳列は行うが、その後は書店の裁量に委ねる(≒その後は出版社が積極的に営業を行うことはない)」なのかを、よく確認しておく必要があります。
 書店にとって陳列スペースは大切なもの。無名の、無評価のあなたの作品が、あなたの近くの書店に20冊平積みしてあるというのも不自然で「著者を納得させるための演出」の可能性が大です。(売れなくても場所代として出版社が全冊買い取るという条件で置いてもらっている可能性があります)。
 90万部以上のセールス実績がある人気作家Aさんの作品ですら、小社作品の場合、「取次」(卸会社)が書店に新刊配本してくれるのは初版発行部数のわずか12%。あとは地道な追加注文によって増刷に至っています。50部以上販売していただいた書店も何店もあります。そのような本でさえも、書店でのデータ管理が進む今日、1部も扱ってもらえない、見向きもしてもらえない書店の方が圧倒的に多いのです。

 また、アマチュア創作家の方は、自分の本が書店に並んだ日が書籍販売のスタートだと思っているようですが、これは大きな間違いで、あなたの本が書店に並ぶ1〜2か月前には十分な仕掛けをする必要があるのです。つまり、書店に並んだ時がスタートではなく、書店に並んだ時に最高速度に達するよう、あらかじめ助走しておかなければならないのですが、大手自費出版社の書店流通の場合、そういった下準備はまったく行われているように思えません。
 
 ところで、
友人や知人は、あなたの本を買ってくれるのでしょうか? 
 
売れる冊数は、あなたに来る年賀状の枚数とほぼ同じだと思ってください。(講演会などで相当数を動員できる人や、テキストなどとして半強制的に購入させられる立場にある人は話が別です)。これは、友人・知人たちにDM(新刊案内の手紙)を出す努力をした場合です。10冊買ってくれる友人もいることでしょう。しかし、それ以上に、遊ぶ時には(宝くじ、パチンコ、飲み屋で)5000円、10000円のお金を平気で使う友人に、あなたの力作1500円を「高〜い!」と平然と言われる時の辛さ、「高い」と言わないまでも、買ってくれない友人の多さをあなたは知ることでしょう。また、DMですぐに10冊買ってくれる人は、義理で購入しただけで、たぶん読みもしていないだろうな、ということを後日、知るでしょう。
 最初は「本を売りたい!」と思っていたあなたは、きっと読んでもらうということの難しさを痛感するでしょう。
 「この前、あなたの書いた本、読んで良かったよ! 友達にも薦めたいから、もう1冊追加注文!」
 こんな言葉が聞けたら、200万円くらい安いものかもしれませんね。



考察7:
ISBNもつきます。国会図書館にも献本されます。
 自費系共同出版(書店流通型自費出版)にもISBNがついていますが、図書館での蔵書基準として利用されている書誌データ上では「標準MARC外」という分類をされ、それらの約8割の本は『出版年鑑』にも収録されていないのです。(自費出版本や自費系共同出版社の本は国会図書館を除くと、公立図書館などではリクエストが受理されないだけでなく、寄贈という方法でも受け付けてもらえない場合や、早々に処分される傾向にあること覚えておく必要があります)。

 実はISBNというのは誰でも簡単に取得できるものなのです。取得費用も2万円程度です。自費出版本にあなたが取得したISBNやバーコードをつけることはもちろん、あなたがコピー機でつくった冊子にISBNをつけることもできるのです。ただし、ISBN・出版者記号を取得したからといって、本が書店に流通するわけではありません。本を流通させるためには取次に口座を開設すること、または、発売元となってくれる出版社が必要です。(ISBNを取得し書誌データを登録すれば一部のネット書店には書籍情報を反映させることは可能です。しかし、この場合も取次と取引がなければ、ネット書店に書籍情報が反映されてもステータスは「取り寄せ不可」です。)

 また、国会図書館への納本は、選ばれた本が納本されるのではなく、義務行為なのです。小社の場合、「献本」ではなく、新刊発行時に半自動的に「購入」していただいております。

 自費出版でも書店に流通させることは可能ですし、自費出版本の書店流通をサポートしている発売元もあります。
 大切なことは、自費出版される場合、安易に書店価格を印刷してしまわないこと。ISBNなどは後取得でも問題ないと思います。(ただし、流通させるためには、発売元の最低限の審査等があるとお考えください)。



考察8:絶版にせず、売り続けます。
 「絶版」とは、簡単に言うと「何らかの事情で、出版した書籍の印刷・販売を中止すること」です。「絶版にせず、売り続けます」というセールストークはアマチュア作家にとっては魅力的なようですが、本当にそんなことが可能なのでしょうか?
 
 小社から出版し、現在4刷に至っている作品Tと作品Uの販売データを元に、ちょっと考えてみましょう。
  作品T 作品U
初版 1998年5月 2000年7月
2刷 1998年9月 2000年9月
3刷
1998年10月 2002年9月
4刷
1999年8月 2004年10月
最近1年間の売上 約40冊 約400冊
 小社でも全力でつくった作品は売り続けてゆきたいものです。しかし、小社増刷の最小単位は1000部。年間400冊のペースでコンスタントに売れている作品Uは売切れしだい2〜3年の販売計画で増刷ができますが、作品Tの場合は販売の勢いが失速しているので、5刷目は楽観的に見積もっても消化に20年程度の歳月を要することになります。(作品Tの場合、500部単位の増刷も可能ですが、1000部と500部の増刷費用の差額はわずか2万円なので、500部増刷するのであれば1000部増刷しても同じことになります)。たとえ、20年で完売できるとしても、在庫が資産として課税対象となるだけでなく、保管のスペースも必要な上、保存していると短期間でカビくさくなったり、紙魚(シミ)が発生したりと劣化してゆくことを考えると、そこには、秀作であれど売り続けてゆくには、それなりの需要が必要であるという現実が迫ってくるわけです。

 「絶版にせず、売り続けます」とアマチュア作家の方が聞けば、「在庫がなくなりしだい、増刷し、売り続ける」と解釈するのかもしれません。しかし、「絶版」にはならなくても「品切れ」「長期品切れ」「重版未定」という状態は一般的に多々あるのです。また、絶版にせずに売り続けるという文言の裏には、「長期品切れ」になっても「出版権は手放さない」ということを意味しているのかもしれません。

 共同出版では増刷費用は出版社負担のはずが、いざ、在庫がなくなっても、発売からの時間経過などの理由をつけて増刷を渋り、増刷分の20%程度を著者に買い取り要求するケースもあるようですが要注意です。なぜなら、増刷時は、200冊買い取りの費用で1000部印刷製本できてしまう場合もあるからです。



考察9:出版社の人は、とても感じの良い人でした。
 
それは、あなたが高額な費用を払ってくれる「お客様」だから、原稿を褒めるのです。好感の持てる対応なのです。
 著者と編集者との間では火花が散ることしばしばです。出版事情に疎い新人の著者とならなおさらのことでしょう。
 出版社が、あなたの本を「売って儲けよう」と真剣に考えているのであれば、タイトルや内容に関して出版社の非常に多くの指図が入ります。原稿量を30%以上削られても不思議ではありません。書きなれていない人の文章は贅肉が多すぎるからです。
 あなたの思う通りに出版社がつくらせてくれるというのは出版社が「売って儲けよう」と考えているのではなく「つくって儲けよう」と考えているからです。
 自費系共同出版社から出版された本では、お客様(著者)の意向を重視しすぎて、書籍にとってもっとも大切なタイトルですでにつまづいてしまっているものも少なくありません。また、ペンネームも不適切なものが目立ちます。
 そもそも、出版社は採用する原稿を褒めたりはしません。また、良心的出版社であれば「いかに書店で本を売ることが難しいか」という著者にとっては面白くない話も、きちんと説明してくれます。そういった良心的出版関係者ことを「対応が良くなかった」と感じられる人も多いようです。良心的な出版社・出版関係者は、あなたの作品で儲けようと考えても、あなたから儲けようとは考えていないということに気づくべきです。

 落語家や漫才師が弟子入りする時の、師匠の家の前でのやりとりを思い出してみてください。



考察10:あなたの原稿は本当に選ばれし原稿なのでしょうか?
 
共同出版を行っている出版社の中には「応募された原稿の5〜10%の優れた作品のみに共同出版を提案しています」と言っているところもあるようですが、本当なのでしょうか?
 共同出版を行っている出版社では年に1000タイトル前後の新刊を発行していところもあります。これは中堅有力出版社の約10倍の新刊点数なのです。もし本当に原稿を5〜10%に厳選しているのなら、年間1000タイトル発行という出版社に応募される原稿量はその10〜20倍の10000〜20000作品ということになります。共同出版を提案されても契約しない人もいることを考えると、もっと多い原稿が持ち込まれていることになります。そんな量の原稿をどのように審査していくのでしょうか?

 先日、某自費系共同出版社で「審査員から高く評価され、広く一般の読者に供するに相応しい作品」として共同出版を提案された方の原稿を拝見させていただきましたが、「日記系サイト」の域を出ない表現も未熟な徒然草で、小社では45点(「書店流通の価値なし」)の評価でした。
書店流通の価値がまったくないような原稿にさえ、著者に多額の費用負担させ「共同出版」を提案する出版社の姿勢には疑問を感じずにはいられません。
 
 また、共同出版された作品を何冊か拝読させていただきましたが、「編集」という作業がほとんどされていなかったり、「作品」や「著者」のことを考えていない安易な仕上げだったりと粗悪さが目立ちました。(著者が費用負担で悩んでいると、文章を二段組にしてページ数を減らすなど、著者に費用負担させる割には作品の仕上がりより契約達成重視という事例も複数報告されています)。




考察11:
共同出版を勧められて悩んでいます。どうしたらよいのでしょうか?

 ここで、どこの出版社が良い、とか、悪いということを助言することはできません。
 上記で説明した内容をよくよく熟考して、共同出版(書店流通する自費出版)に向けてスタートするか否か、各自で決断してください。ただ、「原稿募集」や「出版賞」の看板を掲げていて、「原稿(ブログ)が素晴らしいから共同出版(書店流通型自費出版)しましょう(費用負担してください)」と誘ってくるパターンは警戒すべきです。
 
 共同出版(書店流通型自費出版)をして不満を抱いている人は比率として少ないことも事実のようです。
 ただし、これは「出版する」という行為の意味や目的が個人によって著しく異なることに起因するもので、慎重に受け止めなければなりません。
 
共同出版(書店流通型自費出版)をする、しないで、もっとも大切なことは、あなたの求めている執筆活動や表現活動の方向性を再確認することです。
 執筆活動や表現活動の方向性というのは、厳しい評価も甘んじて受け、きちんとした作品を世に送り出したい、プロ、セミプロ、あるいはプロ意識を持って継続的に出版活動を行っていきたいのか、それとも、とにもかくにも本という形にしたい。カラオケやシロウトのど自慢大会レベルと言われようが構わない。金を払ってでも、作家気分を味わってみたい、書店に本が並ぶことが夢、自分の分身が国会図書館に納本されるなら本望だ、と考えるかの違いです。
 最近では、親御さんが子供のために多額の費用負担をしているような場合もみられますが、小さな才能を開花させるより、勘違いして天狗にさせてしまうだけです。(新人賞などの応募資格を失う場合もあります)。
 たしかに、書店流通型自費出版でヒットした作品はあります。しかし、その出版社が年間出版しているタイトル数からするとヒット率はあまりに低すぎます。書店流通型自費出版を行っているある出版社の、書店での年間販売状況(新刊と既刊)を独自に解析してみましたが、わずか1%のタイトルで、その出版社の売り上げ全体の90%を占め、10%のタイトルで95%の売り上げを占めているのです。ヒットした作品というものは目立ちますが、このデータが何を物語っているか冷静に考えてみてください。

 自費出版や共同出版は借金をしてまでするものではありません。
間違っても12回を超えるローンには手を出さないこと。家や車のように年中かつ長期間使うものではないからです。(契約後、出版までに出版社が倒産した場合、ローンだけが残るという最悪の事態も考えておかなければなりません)。
 契約書はその場でサインしないように。必ず、家かホテルに持ち帰り、落ち着いてゆっくり目を通してみましょう。家族や友人、専門的な知識がある人にも目を通してもらうことも大切でしょう。契約書に「発売日」「費用負担」「本の所有権」に関する内容は明記されていますか? 逆に「増刷」「販売」についての「期限」や「制限(例外)」はありませんか? 特に「合意管轄裁判所」という条項があった場合は注意が必要です。これは出版後のトラブルを想定していると思われます。社団法人日本書籍出版協会が用意している『出版契約書』では、「契約の尊重」―――契約外のトラブルが生じた時には誠意をもって解決にあたる―――という内容こそありますが、「合意管轄裁判所」という条項は用意されていません。もし、契約書に「合意管轄裁判所」という条項があった場合は、管轄裁判所をあなたの居住都道府県に変更してから、サインしてください。

 前述したように、共同出版を謳い文句にしている出版社だけが共同出版を行っているわけではありません。ちょっと時間をかけて出版社(発行元)を探すというのことは、作品のためにも大切なことだと思います。

 「編集費がいくらで、デザイン費がいくら」と説明されても、出版社に勤務していてもその部署を経験していなければわからないことも多々あります。広告費用も定価と時価の差が大きいので、一般の人にはわかりにくいことです。(通常の商業出版では、編集費や営業費は継続的トータル的な出版活動から捻出されるもので、下請けにでも発注していない限り1タイトルあたりの明確な編集費など提示できるものではないと思います)。

 本の所有権が100%あなたにある自費出版で出版社に買い戻してもらうような方法で書店流通させる場合は、本は書店で簡単に売れるものではないという現実を十分に肝に銘じておく必要があります。つくった本(現物)の一部(初版部数の25%以下)を書店価格の80%以下で著者購入するだけで、残りは出版社が責任をもって販売する、といった方法がもっとも費用負担面でも販売管理面でも明朗だと思われます。この場合も、買取部数が1000部を超えるような場合は、上記係数値で確認するだけでなく、残りの現物数を確認させてもらう必要があるように思えます。特に、著者が費用負担する場合に初版5000部以上を提案するようなことは現在の出版事情から考えても現実的ではないような気がします。―――法人や団体をターゲットにした初版1万部で費用1000万円前後の書店流通型自費出版もあるようです。初版で1万部もつくると考察1で記した係数値は著しく下がりますが、多く刷ったからといって取次が新刊配本してくれる部数が増えるわけではないので注意が必要です―――

 
 「今しか出版するチャンスはない」「確率は低いかもしれないが、ベストセラーになるかも」という心の奥底にある欲は、あなたの目を眩ませ、あなた自身が感じている「なんとなく変」という気持ちや、周囲からの警告にも耳にフタしてしまうものです。とにかく、契約をされるまでに、次の3冊の本に目を通してみてください。非常に読みやすい文章なので必要箇所は数時間ですべて読めます。
@『38万円で本ができた』(著者:両国の隠居)[太陽出版] P12以下
A『ついていったらこうなった』(著者:多田文明)[彩図社] 第11章「『あなたの原稿が本になる』の裏側」
B『だれが「本」を殺すのか(下)』(著者:佐野眞一) [新潮文庫] P268以下
 また、インターネットで、「共同出版」または「協力出版」または「自費出版」の単語と、「普通以下の生活」「変則的二重払い」「商法」「安易に実現」「例外的な奇跡」「うらおもて」「自己責任」「カモられる」「怪しい」「目的地」「顛末」「売れる訳ない」「全額返金」「素人の無知」「律儀」「即返(即返品)」「著者のニーズ」「事実と異なった説明」「大胆不敵」「出してはいけない」「著者がお客」「夢見る」「選定会議」「作家になりたい人」「ワナ(罠)」「闇」「エセ物書き」「著者がお客」「ベストセラーを求める」「自己満足」「ウソ」「裁判」「告訴」「自尊心の高い人」「出版は夢」「野心」「4つの条件」「良書必ずしも売れず」「三つのハードル」「チェックポイント」「営業活動の一環」「ポジション」「著者側の責任」「印税生活」「丸儲け」「転換点」「一般的見解」「うぬぼれ」「最終校正」、そのほかの単語を掛け合わせて、根気よく検索してみると、より多くの情報を得ることができると思います。検索時には“共同出版”とクォーテーションマークで囲むと“共同”と“出版”が分離されないので効率的です。また、複数の検索エンジンを使用されることをお勧めします。(“共同出版”と“協力出版”の単語を入れ替えることにより、さらに多くの情報を発見できると思います。具体的な出版社名で検索することも有効です。)
 
 このような商法は出版に限らず、音楽、絵画、モデルや俳優養成の世界にも存在するようです。
 親しい友人が150万円でCDデビューするチャンスを得た、150万円でタレントデビューするチャンスを得た、という状況に話を置き換えて考えてみると少しは冷静になれるのではないでしょうか?



考察12:どんな出版社に売り込めば良いのでしょうか?
 日本には17000もの出版者(出版社)が存在するのです。(実質活動しているのは4000社と言われています)。
 私どものような無名の出版社にさえ、非常に多くの原稿が寄せられます。もちろん、小社も新鮮な作品を求めていることは事実です。また、小社に限らず「持込原稿お断り」を建前にしている出版社の多くも、実は、未知の著者、著作物を探していないわけではないのです。
 しかし、実際に送られてくる原稿は、日記・作文レベルがほとんどです。書き上げたことに自己満足してしまい、まったくいってよいほど推敲がされていないどころか、音楽でいうとチューニングすらできていない演奏、スポーツでいうと1か月ほど前に我流で始めた人がいきなりプロテストを受けに来ているといった状態です。なによりも、原稿持込の基本が間違っていると断言できるケースがほとんどです。(原稿の持込方法と原稿の内容度は比例していると言えます)。持ち込まれる90%以上の原稿は「書店に流通させるだけの価値」があるかないか以前の問題で、これでは、ほかの出版社が「持込原稿お断り」とするのも、もっともなことだと思います。

 ここでは出版社への原稿持込の方法を伝授することはできません。
 なぜなら、多くの人がその方法を使えば、新たなハードルが生じるだけだからです。持ち込み方法は各自でお考えください。
 ただ、3点ほどアドバイスできることがあります。
 ひとつは、年間新刊点数の多い出版社は、無名の新人は避けた方が良いということ。(きちんとした出版賞を目指すという場合や、出版社が十分な仕掛けをしてくれるというなら話は別です)。十人兄弟でも、一人っ子でも、親が子供に注ぐ愛情は同じと言うものの、やはり、1人当たりに注がれる愛情は十人兄弟より一人っ子の方が多いというのは明白。本も同じです。年間240作品(月20作品)発表する出版社と、年間24作品(月2作品)発表する出版社では、出版社にとっても1冊の存在価値が違います。新刊発行点数の多い出版社では、売れなかったときに見切られるのが早いと思っておいた方がよいでしょう。特に無名の著者の本は、常備(再出荷)を繰り返しながら地道に売ってゆかなければならない場合がほとんどです。新刊点数が多いということは総点数が多いということ。新刊点数が多い出版社からだと、限りある常備書(再出荷)のリストにすら載ることが難しくなるからです。
 もうひとつは、「小出版社や零細出版社からだと出版し易いのでは」という勘違いです。小出版社や零細出版社の中には「非専業系」という「出版活動以外に本業(収入)を持つ会社」も多く、逆に、定期刊行の必要がない分、作品へのこだわりなども生じ、ハードルが高くなります。
 そして最後は、東京の出版社がすべてではないということ。作品の内容によっては、東京から全国に発信しなくても、インターネットの時代、あなたの街から全国に発信した方が堅実かもしれません。必ずあなたの都道府県にも「ローカル出版社」があります。そういったところは地元の書店に手堅い販売網を持ち、地元の新聞社に太いパイプを持っている場合もあります。(最近では、出版エージェントを通す方法も効果的なようです)


 
もっと読書をしてみてください。
 もっと書店・図書館を散策してみてください。
 そうすれば、自分の作品を売り込むべき出版社が自然と見えてくるはず。
 書くことに熱中しすぎて、出版社や出版界の現状について勉強不足の人が多すぎです。



 最初に書きましたが、自費出版も共同出版も基本的かつ重要な表現方法です。
 しかし、粗悪な自費出版本や共同出版本が乱造されることにより、自費出版本や共同出版本全体の評価を下げてしまっただけでなく、良書の進路妨害、そして、出版するという行為自体の価値までも下げ始めているような気がします。金さえ払って武道館やロイヤルアルバートホールでカラオケコンサートをされたのでは、武道館もロイヤルアルバートホールも泣いてしまいます。出版社は、書店という有限のステージに立たせるだけの最低限の価値ある書籍を、自社名をブランドとし送り出さなければならないと思います。
 「この本を出版して良い、悪いと出版社が判断していいのでしょうか」と主張する自費系共同出版社もあるようです。そういった出版社が、「共同」と銘打って、1冊も販売しなくても出版社側に十分な利益が出るような費用負担を、純粋な表現者たちにさせているようなことはないものと信じたいところです。


 あなたの書かれた原稿が大切だからこそ、その原稿を最大に活かしてくれる出版社を見つけてほしいと願っています。―――このページを読んで、自費系共同出版社への持ち込みを思いとどまり、最終的に「小学館」「PHP」などから著者が1円も費用負担することなく商業出版された方がすでに3人いらっしゃいます。考えてみてください! 本当に「素晴らしい原稿」「出版に値する原稿」であれば、どこの出版社の編集者が読んでも「ある程度の評価はされるはず」です。―――

監修:17出版

このホームページの文章を転載することを禁じます

※3次利用を防止するためです。
リンクは、ttp リンクでなく http リンクでお願いします。



募集:多くの人へ情報をフィードバックするために、最新の情報を提供してください!
 アマチュア作家をターゲットとした出版社では、ネット情報を学習し、ここで提示したチェックポイントをかいくぐる新たな営業トーク、新たな戦略で展開しているところもあるようです。また、こういった情報のページへの第三者からの誘導を防ぐため、さまざまな理由づけを行い「出版制作過程をブログやホームページで公開しないよう」と指示する出版社もあるようです。
「自費出版」「共同出版」成功談・失敗談・未遂談、書店関係者や、共同出版の現場に関与したことのある方、
最新の情報や資料の提供をお待ちしております。また、このページに盛り込んだらよいと思われるキーワードなどを教えていただければ幸いです。率直な御意見・御感想も、お寄せください。
(こちらからメールください)



参考:
「初版部数」と「制作費用」「予定価格」の関係

 最後に、2006年4月に小社から発売した書籍の「初版部数」と「制作費用・設定価格」の関係を表にしてみました。参考にしてみてください。
制作費用=編集+デザイン+印刷+製本+基本的な広報費用。
A5判 ソフトカバー 本文272ページ2色刷り。カバー4色刷り。スリップ・読者カードを含む価格。
基本的な広告費用=A4フルカラー新刊ビラ600店分+モノクロ新刊ビラ250店分+絞込みFAX同報2600店分+毎日新聞朝刊第一面広告。
  
初版部数 制作費用 設定価格
1000部 139万円 3500円
2000部 154万円 2000円
3000部 177万円 1500円
4000部 201万円 1250円
5000部 219万円 1100円
 小社では初版500部とか1000部という本はつくりません。なぜなら、上の表を見ていただければおわかりになると思いますが、初版1000部つくっても2000部つくっても総制作費用はほとんどかわらず、一冊あたりの原価が跳ね上がるだけだからです。1000部実売するということは容易ではありませんが、ちょっと話題になれば1000部くらいの出荷の必要性はすぐに生じます(後日、返品されてくる可能性は非常に高いのですが)。そういった意味からも500部という初版部数は学術書などを除いては常識的に考えられない部数ですし、初版1000部というのも、その作品を売っていこうという気持ちが出版社にあるとすれば経済的にも効率的にも悪すぎる部数です。今回の新作は初版3000部です。初版3000部と初版5000部では2000冊の印刷製本費用の価格差がわずか42万円しかありません。初版5000部つくらない理由は、@在庫を保管する空間的な問題。Aロングセラーを狙う場合、初版原価も重要ですが増刷原価も重要になってきます。増刷はできるだけ少ない部数で行える方がロングセラーにつながります。初版5000部で書籍価格を1100円とした場合、増刷単位が3000部以上でしか行えなくなるからです。B単に安い価格の本をつくることは意味がなく、適切な価格でつくり、利益が生じた場合は、次作制作費に回す。
 中でもAが最大の理由となります。

 最近では自費出版をターゲットとした書店FAX同報サービスもあるようです。しかし、自費出版物(自費系共同出版社)のFAX同報は書店にとっても迷惑FAXに過ぎないと思います。今回の作品の新刊ビラの直接回収率は2%、FAX同報は1%未満でした。また、毎日新聞の朝刊第一面下書籍広告も、読者からの直接問い合わせは7件(直接販売数5冊)です。書籍広告の効果は年々著しく低下していると言います。厳しい現実を感じてください。


追補:どうしても社会に向けて出版で表現したいという人へ
 もし、書店流通型自費出版に200万円以上のお金を投入されるのであれば、その前に上記の@ABを読んだ上で、下記の2冊を図書館で探してでも読んでみてください。あなたの出版を実現するための最良のプログラムが必ず見つかることでしょう。
Cダカーポ102号[マガジンハウス社](1986年)
D『自費出版入門』(著者:深田敦夫)[日本機関紙出版センター](1986年)(この本はインターネット書店では絶版となっていますが、まだ新本が入手できます)
CとDを読み、何かが見えたら次の本にも目を通してください。
E『出版界の虚像と実像』(西谷能雄著)[未來社](1981年)
(今回の場合、Eを単体で読んでも意味はありません)


「共同出版 体験編」を読む

著作権を侵害するような転載された場合は、担当の弁護士を通じて所定の手続きを行ないます。
初掲載:2003年8月12日 
更新25:2005年5月29日

改訂1:2005年8月14日
改訂1更新16:2006年11月27日
改訂2(増補):2007年8月18日
改訂2更新3:2009年1月31日
改訂2更新4:2015年6月9日
メイリオ:2015年10月19日